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YouTube再生回数5週連続1位! 心折れても「面白い」を手放さなかったプロデューサーの物語

大手テレビ番組制作会社で若くして演出に抜擢され、手がけた番組は大ヒット。
転職したアカツキでは『クマーバチャンネル』生みの親として、短期間でYouTube再生回数ランキング5週連続1位、再生回数4千万回(2020年2月26日付)へと育てた樋渡昇一郎さん。「できるテレビマンの成功譚」が浮かびますが、インタビューで見えてきたのは、心折れる経験に涙を流しながらも「面白いこと」を手放さず生きてきた樋渡さんの軌跡でした。(株式会社アカツキ 社内報 A  Story  2020年3月号より)

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原点は、テレビが生活の真ん中にあった普通の少年

生まれ育ったのは長崎県佐世保市。銀行員のおやじと専業主婦のおふくろ、妹とばあちゃんの5人家族です。おやじは家で仕事の愚痴を言ったことがない穏やかな人で、おふくろは明るい愛されキャラ。今でも年末には、実家に僕の友達が集まって餅つきをするんですが、相変わらず家族仲はいいです。
田舎によくある普通の家庭で、いつもテレビがついていました。小学生のころは『ダウンタウンのごっつええ感じ』や『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』『ボキャブラ天国』が好きでした。テレビの存在は大きかったな。中学ではゲームにはまり、高校では部活のサッカーに打ち込んで、大学受験で、高校の担任から「男なら東京へ行け」と言われたんです(笑)。必死に勉強して東京の国立大学に合格。4年間、男ばかり300人の寮で過ごして、修学旅行みたいな毎日でした。「何か大きなことに挑戦したい」とバイクで日本縦断したり、友達とレンタカーでアメリカ横断したりしました。卒業が近づき、ほとんどの仲間が大学院へ進学する中で、僕は就職を選びました。子ども時代、浴びるように観たテレビの世界に挑戦したいと思ったからです。

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敏腕上司との圧倒的な能力差に打ちのめされた新人時代

子どものころから大好きだったバラエティ番組を作っている大手テレビ番組制作会社「IVSテレビ制作」に入社。入社当初は忙しいながらも楽しい日々でしたが、超敏腕ディレクターのADについてから一変。思うように動けなくて毎日けちょんけちょんに言われました。その人に憧れていたから、自分が情けなくて、辛くて。出勤すると会社のシャワールームに閉じこもるようになりました。先輩との圧倒的な力量差に心折れたんですね。
そんな行動をとりながらも、仕事にはがむしゃらでした。つい自ら120連勤、1日休んでまた120連勤なんてことをして追い込んでいました。肉体的に一番辛かった時期でしたが、その先輩ディレクターとの仕事をやり遂げ、社内で独り立ちできました。

スピード昇進し、番組を立ち上げて……訪れた燃え尽き感

その後は、憑き物が落ちたように突き進み、「ザ!鉄腕!DASH!!」などを担当し、「ネプリーグ」でディレクターに昇進。数々の番組を経て、29歳でキッズ番組の演出に抜擢されました。テレビ業界の演出は映画でいう総監督のような役割です。異例のスピード出世でした。
演出として僕が立ち上げたキッズ番組があるのですが、最初は期待された視聴率に届かず苦戦しました。制約があって、面白いと思えないこともやっていたんです。でも数字が取れないのは演出の僕の責任。思いきって面白くない部分を取っ払ってみると視聴率は復活! 「自分の“面白い”を信じる」大切さを感じました。この番組は現在も放映が続いています。
知見もたまってきた頃、「番組制作でやりたいことはやりきった」と感じました。10年後になりたい姿をテレビ業界の外の世界でイメージしたり、「転職」も思い浮かべたりするようになりました。

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新しいことに挑戦したい!夢ふくらませてアカツキ入社

2014年『サウザンドメモリーズ』のCMがガンガン流れ、僕もプレイしていました。同郷で幼なじみの香田くん(アカツキCOO)がアカツキを創業したから「すげえなぁ」って思いながら。そんな話題を肴に、一緒に飲むこともありました。
2016年春、香田くんから「新規の映像事業について相談したい」と連絡が来ました。何か新しいことをしたかったので「いいね!」とすぐ打ち合わせをすることに。プロジェクトを立ち上げた(当時アカツキ社員の)吉澤さんから「オンラインの映像プラットフォームを作りたい」と説明を受けました。
それからは、仕事終わりにアカツキで打ち合わせる日が増えました。まず、テスト番組をつくろうという話に。コスプレイヤーがアニソンを歌って得点を競う番組を、8月にYouTubeライブとニコ生で配信しました。今思うと「なんであの企画やったんだっけ?」と思うほどあまり意味がなかったんですが、楽しかったなぁ!その後、誘っていただきアカツキへ転職を決めました。

ロジカルな世界で、よりどころだった感性が瀕死の状態に

制作会社を退職して、2017年1月にアカツキにジョインしました。最初に携わったのはヴァーチャルアーティストIP創出のプロジェクトです。僕のミッションは、ヴァーチャルアーティスト『LUMi』をプロデュースすることでした。これがとてもしんどかった……。これまで「面白いかどうか」という自身の感覚を軸にやっていたけれど、吉澤さんはものすごく優秀でロジカル。原理原則を理解して進める人でした。感覚から論理の世界に飛び込んだ僕は、レベルが違うし、オタク文化にもなじめていないことも重なり、プレッシャーで常に手足に汗をかいてました。メンバーたちのエンタメの知識の深さにも圧倒され、とてつもなく高い壁を感じました。できない自分を認めたくなくて、金曜の夜は昔の友達と飲んでばかり。テレビの世界に戻りたいとさえ思いました。
2017年4月5日。しんどさが飽和点に達し、仕事中に泣いてしまいました。前職も相当キツい場面を乗り越えてきたけど、泣いたのは初めて。だから、カレンダーにもメモしているんです。ずっと忘れられない日です。もがきながらやってきたけど、8月に吉澤さんから「樋渡さんにはこのプロジェクトはきついだろう。離れてみてはどうか」と提案がありました。絶望的な気持ちの中、なんとか『LUMi』のボーカロイドソフトをリリースして、ひと段落した9月、プロジェクトを離れました。……あの日々が人生で一番きつかった。でも、その経験のおかげで今があると思っています。

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自分のできること・好きなことに再会して、息を吹き返す

その後はLX事業部で新規体験事業やそとあそびの動画を制作しました。久々の動画で息を吹き返した思いでした。できないことをできるようにと必死に背伸びして食らいついていたから、自分ができることをやる気持ちよさに再会できてうれしかった!2018年3月にイベントプロデュースチームへ異動になり、元CoPro(広報)の滝渕さんと一緒に『BATOLIVE』という、エンタメの異種格闘技型コンテストを企画。YouTubeでライブ配信しました。スピードを重視しつつ、ゼロから1を創りだす面白さに夢中に。自分が得意なフィールドを再認識して、次のステップで企画を磨きたい思いが湧き上がりました。

「キッズ向けコンテンツはいける!」 仮説検証でつかんだ確信

この試みが『クマーバチャンネル』のきっかけになりました。シードプロジェクトの社内制度を利用して、滝渕さんと検討を重ね、キッズ向けYouTubeチャンネルを作ることにしました。僕らはお互い小さな子どもの父親でもあるので。着想を得たのは、韓国企業が配信している『Baby Shark』。当時19億回(2020年2月時点で46億回)も再生されていたバケモノ級の大人気ソングです。キッズ向けコンテンツの中でも特に音楽にニーズがあることは明白で、オリジナルキャラクターを付加すれば、IPとしての成長と幅広い展開の可能性もあると考えました。
仮説検証のため、2018年11月にフリー素材で作ったキッズ向けYouTubeチャンネルをオープンしました。クリスマスソングに合わせて3Dの動物キャラクターがモーションキャプチャで踊る動画を配信しました。ダンサーには発注できないから、最初は僕が踊っていました(笑)。シェアもせずひっそり立ち上げたチャンネルでしたが、1ヶ月で1万5千回の再生数に!「音楽×キャラクター」はいける!と立証されたので、正式に子ども向けYouTuberチャンネル制作を決めました。

少数精鋭チームで出発!親子愛がテーマの『クマーバ』誕生

始動に向け、社内で仲間を集めました。僕と滝渕さんに加え、シナリオチームROOTSリーダーの水野さんと村田さん、キャラクターを動かすモーションキャプチャはエンジニアの駒井さんと大嶋さん、3Dデザインは小川祐果さん、IPアドバイザーとして藤田さん、振り付けを椨さんとシトさん。スペシャリストが集まりました。
肝となるキャラクターについては、自分に深く問いました。『LUMi』に携わった時に「キャラクターって作る人間の中にあるものからしか生まれないな」と感じていたからです。僕の内からは「親子愛」というテーマが自然と出てきました。親の目に映る子の成長する姿は「愛」でしかない。愛こそが子どもの健やかな成長を助ける。そんな思いから、親子愛を根底に据えました。
次は、親子愛を象徴するキャラクターです。繰り返し観てもらうために奇抜なものではなく、純粋にかわいい存在にしようと考えました。そこで、親子一緒にいる様子が想起しやすい動物の「クマ」をモチーフにすることに。それをかわいらしい『クマーバ』に仕立ててくれたのがイラストレーターの谷口亮さん、2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式マスコットキャラクターの生みの親です。 「絶対ダメだろうな…」と思いながらメールでお願いしてみたら、快諾してくださったんです。
谷口さんが提案してくれたキャラクター3案のうち、子どもたちへのアンケートで一番人気だったものをブラッシュアップしました。『クマーバ』は5歳のクマの男の子。家族、愛、笑顔、成長、未来などを表現するため、おでこにハートマークがついています。…と言葉にすると簡単ですが、プロセスはかなり大変でした。2Dでのかわいさを3Dで再現するのはとても難しかったし、ようやくできあがった3Dをモーションキャプチャで動かすのは、とんでもなく難しかった。新しいことに躊躇なく挑戦させてくれるアカツキにおいても、ここは前人未踏の領域でした。みんなで試行錯誤しながら切り拓き、明るく元気に歌い踊るクマーバが誕生しました。

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目指すは令和を代表するキッズ向けキャラクター!

『クマーバチャンネル』初回配信は、令和元年初日の2019年5月1日。令和を代表するキャラクターになってほしいという願いを込めて、1日16時にYouTubeの公開ボタンを押しました。海外時間も考慮すると16時より前は前日の日付で公開されてしまうからです。令和元年の一番乗りの動画になるようにこだわりました。
最初の波は、リリースから1ヶ月後の6月5日。『パプリカ』のカバー動画を配信したところ、再生回数がどんどんアップしました。次は8月。リサーチで子どもたちが夏休みに入る8月は再生回数が増えるとわかっていたので、夏休み直前に、クマーバと子どもたちが一緒に『パプリカ』を踊る動画をアップしました。これの再生回数が伸びたおかげで、ランキングサイトのバーチャルYouTuberカテゴリーで、5週連続1位になりました。今では、総再生数4千万回を超えています。大ホームランです。
クマーバは、バーチャルだけではありません。これまでに2回リアルイベントも開催して、子どもたちとふれあっています。動画を見て来てくれた多くの親子がクマーバで笑顔になってくれる。どんどん好きになってもらえていると感じています。ぬいぐるみも初回出荷分はすぐに完売して増産予定です。
軌道に乗ってきたところで、動画ディレクション・編集に川島さんと関根さん、TikTok運用に門田くんを迎え、今チーム・クマーバはより楽しさを追求しています。

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忖度ない子どもたちに響く「面白さ」を、最高のチームで

「樋渡さんって怒らない。いつもニコニコしてる」って言われることがあるけど、エンターテイナーとしての僕の矜持があります。僕は人と争いたくない。常に面白いことを考えていたいから。エンターテインメント、特に「面白いこと」を仕事にする人間って、ご機嫌であることが大切だと思っています。そして仲間の力を信じること。そうするとチームメンバーも自然と楽しそうになるし、面白いことをやっていれば仲間も集まる。チームを盛り上げることは、プロジェクトリーダーである僕の大事な仕事。そして、みんなの笑顔を見るのはリーダー冥利に尽きます。
正直、『クマーバチャンネル』がこれほどヒットするとは予想していなかったですが、チームの一人ひとりがクマーバとタブリスのことや『クマーバチャンネル』が大好きで、楽しみながら作っているからだと思います。つまり、最高のメンバーということです!
YouTubeのコメント欄にはたくさんの声が寄せられます。「子どもがうれしそうに観ているうちに、私も好きになりました」というお母さんも多く、親子一緒に楽しんでくれているのがすごくうれしいです。
YouTubeって配信後すぐに反応が届きます。その世間と真剣勝負している感覚が僕は好き。自分が面白いと思うことを投げかけるとフィードバックがある。ダイレクトに結果が見える。日々勉強ですね。確かな手応えまで、まだ道のりは長いと思っています。
プライベートでも、『クマーバ』は家族のコミュニケーションにひと役買ってくれています。新しい動画が面白くないと息子はすぐにどっかへ行っちゃう(笑)。忖度がない子どもの反応は本当に参考になります。これからも僕らしさを保ちながら、愛するチームメンバーや家族の力を借りて『クマーバチャンネル』を盛り上げていきます!

【樋渡 昇一郎プロフィール】
Shoichiro Hiwatashi  クマーバチャンネルプロデューサー
1985年長崎県佐世保市生まれ。東京農工大学卒業後、IVSテレビ制作入社。『ザ!鉄腕!DASH!!』のADからキャリアをスタート。『ネプリーグ』、『ハモネプ』、『カラオケ★バトル』のディレクターや、キッズ番組の立ち上げ、演出を担当。2017年アカツキへ。複数の新規事業を経験し、YouTubeで『クマーバチャンネル』を立ち上げる。

写真:磯野 司   文:宮後 佳世  編集:坂井 朋子


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